「自分にはそれほど多くの財産がないから、遺言書なんて必要ないのでは?」と思っている方も多いかもしれません。しかし、遺産の総額が少ない場合でも、遺言書があることで相続トラブルを未然に防ぎ、家族に安心を与えることができます。この記事では、遺言書の重要性と、特に不動産を含む遺産相続で直面しがちな問題について詳しく説明します。
家庭裁判所のデータが示す遺産分割の現状
令和3年度に家庭裁判所に持ち込まれた遺産分割事件の約3分の1が、総額1,000万円以下のケースであることをご存知でしょうか?さらに、5,000万円以下のケースを含めると、全体の約76%がこの範囲に収まっています。このデータからもわかるように、遺産の多寡にかかわらず相続問題は起こり得るのです。
特に、不動産を含む遺産ではトラブルが生じやすい傾向があります。例えば、1,000万円以下の遺産で不動産が含まれている場合、相続問題に発展する割合は56.2%にも上ります。これは、現金や株式とは異なり、不動産は簡単に分割や売却ができないため、相続人同士の意見が対立しやすいからです。
不動産相続の難しさ
不動産相続が特に難しい理由の一つは、家や土地が「実家」であることが多いという点です。親が亡くなった後、その家を売るかどうかで相続人の間で意見が分かれることがあります。「誰かが住み続けたい」「思い出が詰まっている場所を手放したくない」などの感情が絡むため、話し合いが難航しがちです。また、不動産は現金とは異なり、簡単に均等に分けることができません。そのため、遺産分割に時間がかかり、結果として争いに発展することがあるのです。
こうした不動産相続におけるトラブルを避けるためには、事前に遺言書を作成し、自分の意思を明確に示しておくことが非常に重要です。
遺言書の種類と選び方
遺言書には主に3つの種類があり、それぞれに特徴があります。自身の状況や希望に合わせて適切な形式を選びましょう。
自筆証書遺言: すべて自分で書く遺言書です。比較的手軽に作成できますが、法律上の要件を満たしていない場合には無効となる可能性があるため、注意が必要です。また、遺言書が紛失したり、相続人が意図的に隠してしまうリスクもあります。
公正証書遺言: 公証役場で公証人の立ち会いのもと作成する遺言書です。この形式は最も安全で、家庭裁判所の検認が不要です。相続トラブルを防ぐためには、特にお勧めです。
秘密証書遺言: 遺言の内容を秘密にしたまま、公証人に存在のみを証明してもらう形式です。内容を誰にも知られたくない場合に利用できますが、公証人による検証がないため、内容が法的に有効かどうか不安が残ることがあります。
遺言書がもたらす安心
遺言書を作成しておくことで、相続人同士のトラブルを防ぐだけでなく、家族に安心を与えることができます。遺産が少ない場合でも、「親がどのように遺産を分けたいと思っていたか」を明確にしておけば、遺族同士の意見の対立を避けることができます。また、特に不動産を含む相続では、事前にどのように扱うべきかを指示しておくことで、スムーズな相続手続きが可能になります。
まとめ
遺産の総額が少なくても、遺言書を作成しておくことは重要です。不動産が含まれている場合には特に、家族間の争いを防ぐために事前に遺言書を用意しておくことが必要です。将来の安心を確保するためにも、自分の意思を明確に伝え、家族が困らないようにしておきましょう。公正証書遺言など、安全性の高い形式を選ぶことも一つの手です。
あなたの大切な家族が安心して暮らせるよう、今からできることを始めてみませんか?