1. そもそも延命治療とは?
延命治療とは、生命を維持するために医療技術を用いて行われる治療のことを指します。これらは本来、患者の回復を目的としていますが、治療によって生命を「延ばす」ことだけが目的となるケースもあります。
延命治療の具体例
人工呼吸器の使用
• 自力で呼吸ができなくなった場合、機械を使って酸素を供給します。
• メリット: 呼吸が維持される。
• 課題: 長期間の装着は患者のQOL(生活の質)を大きく低下させる可能性があります。
心肺蘇生法(CPR)
• 心臓や呼吸が停止した場合、胸部圧迫や電気ショックを用いて蘇生を試みます。
• メリット: 心肺停止状態から回復する可能性がある。
• 課題: 高齢者や重病患者では蘇生後に深刻な後遺症が残るケースが多い。
人工栄養補給(点滴・胃瘻)
• 食事が取れなくなった場合、体に栄養や水分を供給する方法。
• メリット: 栄養状態を維持できる。
• 課題: 自然な摂食機能を失った患者に対する長期的な使用は議論が分かれる。
透析治療
• 腎臓が機能しなくなった場合、血液を人工的に浄化する治療。
• メリット: 毒素の排出が可能。
• 課題: 高齢者では身体への負担が大きくなることがあります。
2. なぜ尊厳死宣言が必要なのか?
延命治療は、患者本人の意向が尊重されるべきですが、以下の理由から事前に明確な意思表示が重要です。
家族間での意見の食い違い
• 家族が患者本人の意思を知らない場合、「延命治療を続けるべきか否か」で意見が分かれることがあります。
• これにより、家族間でのトラブルや感情的な負担が増加します。
医療従事者の判断に委ねられるケース
• 意思表示がない場合、医療従事者は治療の継続を優先せざるを得ません。
• これにより、不本意な治療が長期間続くことがあります。
患者本人の「生き方」を尊重するため
• 尊厳死宣言は、患者が望む最期の迎え方を家族や医療現場に伝える大切な手段です。
3. 尊厳死宣言を作成するための手順
ステップ1: 延命治療に対する考えを整理
1. どのような治療を希望しないのかを明確化
• 人工呼吸器、人工栄養、心肺蘇生法など、拒否したい治療内容を具体的に考えます。
2. 家族や信頼できる人と話し合う
• 自分の意思を家族に共有し、理解を得ます。
ステップ2: 書類を作成する
1. 尊厳死宣言書の作成
• 自筆またはテンプレートを用いて意思を記載します(氏名、延命治療の拒否意思、署名、日付などを明記)。
2. 公正証書化(推奨)
• 公正証書にすることで、法的効力を確保し、医療現場で尊重されやすくなります。
ステップ3: 医療機関や家族と共有
1. 医療機関に保管を依頼
• 主治医やかかりつけ医に書類を提出し、医療記録に添付してもらいます。
2. 家族に通知する
• 書類の存在と保管場所を家族や信頼できる人に伝えます。
4. 必要書類の一覧
尊厳死宣言を作成する際に準備するもの:
• 尊厳死宣言書(テンプレートを使用可)
• 本人確認書類(運転免許証やマイナンバーカードなど)
• 印鑑(実印が望ましいが、認印でも可)
• 証人2名分の情報(公正証書を作成する場合、必要に応じて公証役場が手配可能)。
5. 尊厳死宣言を作成する際の注意点
1. 法的効力を確保
公正証書として作成することを推奨します。
2. 内容を具体的に記載
曖昧な表現を避け、どの治療を拒否するか明確にする。
3. 定期的な見直し
健康状態や考え方の変化に応じて内容を更新する。
6. 専門家に相談するメリット
尊厳死宣言は個人でも作成可能ですが、法的効力や内容の正確性を確保するために専門家(行政書士、公証人)に相談することをおすすめします。当事務所では、尊厳死宣言書の作成から公正証書化までサポートしますので、まずはお気軽にご相談ください。
まとめ
延命治療に関する意思を明確に伝える尊厳死宣言は、自分らしい最期を迎えるための大切な手段です。しっかりと考え、適切な形で作成することで、家族や医療現場に安心をもたらします。